COLUMN

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2022.07.09

スリップウェアと十場天伸

7月13日からのイベント”Juba Tenshin Exhibition”開催にあたり、本日より十場天伸さんとスリップウェアの魅力についてご紹介していきたいと思います!まずはスリップウェアという器の起源を改めて。

18世紀〜19世紀のイギリスのスリップウェア
18世紀後半〜19世紀のイギリスのスリップウェア

“スリップウェア” と呼ばれる陶器は、ヨーロッパや世界各国で作られていた古い時代の陶器の1つ。その歴史は紀元前5000年にも遡ります。中でも17〜18世紀のイギリスで多く作られ、他国のそれと比べ独特な風合いを持ち合わせます。

民芸運動を牽引していた柳宗悦、バーナード・リーチ、濱田庄司

一度は時代の発展と共に淘汰されてしまったスリップウェアですが、20世紀初頭、日本の民藝運動によりその「用の美」が再注目されます。民藝運動をけん引していた柳宗悦、濱田庄司、バーナードリーチらによりその作り方が解明され、見事復活を遂げたという背景を持ち合わせます。そのためスリップウェアの技法はイギリスと日本に多く伝わっており、この興味深い背景と技法に魅了された作り手が現在も作陶に励んでいます。今回お招きしている十場天伸さんもその一人。

 

【道具としての器スリップウェア】
スリップウェアのスリップとは、化粧土(砂と粘土を混ぜたもの)を用いて装飾することに由来し、作り方も他の陶器とはすこし違うのが特徴です。一般的な陶器は”ろくろ”などを使って形を成形した後に模様を描いたりするのですが、スリップウェアは逆で”陶板”と呼ばれる粘土の板に先ほどの化粧土で模様を描き、その後型にはめ成形し焼き上げます。

陶板を型にはめ成形する様子

また発祥の地イギリスでは「オーブンウェア」として使われていたスリップウェア。パイやグラタンを焼くために使ったり、直火にかけて煮込み料理なんかにも使っていたようです。それはまさに料理を盛るだけの器としての用途にとどまらず、鍋やフライパンのような”道具”としての魅力があるのです!料理がお好きな方にも面白く感じてもらえると思いますし、きっと工具や道具などが好きな男性にも響くのではないでしょうか? そんな道具としての器スリップウェアの魅力をいろいろな角度からお客様に伝えたいと思うようになったことが、私たちMINGでセレクトしている大きな理由です。

十場さんの自宅で使われているスリップウェアの耐熱鍋

【十場天伸さん】
先ほど説明したように現在でも世界各国にスリップウェアの作り手は存在しその作風も様々。中でも十場さんが作るスリップウェアにはダイナミックな躍動感を感じるものから穏やかな気持ちにさせてくれるものまで、そのどれもが生命力に満ち溢れているように感じるのです。それは十場さんの心情そのものなのかもしれません。

工房で作陶する十場天伸さん
釉薬に使っていると話していた石

十場さんは自分達で食べるお米を育ていて、その際に出る稲を燃やし灰にして釉薬を作ったりもするそうです。時には自ら山に行き粘土を採集したり、気になる石を見つけてはそれを砕き釉薬にしたりなど 生活の全てが作品に繋がっているのです。

窯から出て来たばかりの灰が被った器
供物がされており神聖な雰囲気を感じる窯
失敗しても尚挑戦し続けている大作
十場さんの作るスリップウェア

そして十場さんの器を見ていると様々なバリエーションがあることに気がつきます。2007年につくも窯を立ち上げて以来、技法や窯を増やしその作風の幅を広げているそうです。そのあくなき探究心には尊敬の意を抱かずにはいられません。土や火を通し、自然と真正面から向き合っている姿はなんとも素敵なのです。こうしてできた器には日々の暮らしを豊かにしてくれる活力が宿っているように思えて、十場さんの作る器は”慌ただしく過ぎて行く日常を豊かにしてくれる道具”だと私たち自身感じています。

今回のイベントはそんな十場天伸さんとその器をもっと沢山の方に知ってもらいたい、という思いで開催をいたします。約400点もの器が並ぶ贅沢な機会ですので、実際に作家さんのお話を聞いたり、どう使おうかと想像しながら一つ一つの作品をじっくり眺めたり、ぜひこの素晴らしい器を身近に感じて頂けると嬉しいです!(※初日13日のみ作家在廊予定です。)

眺めの良い工房
十場さんと同じく陶芸家である奥様のあすかさん。生家である自宅前にて

十場天伸 / つくも窯     略歴
1981年生まれの十場天伸は、神戸の都心から少し離れた里山で元々実家だった茅葺屋根の自宅を改装し家族で暮らしています。その周りに工房や窯を作り、同じく陶芸作家である奥様と日々作陶に励んでいます。
陶芸との出会いは島根の高校時代の頃だそうで、その後沖縄やアメリカへの留学を経て京都伝統工芸大学に進みます。今まで度々目にする機会があったスリップウェアに惹かれ自身の作風を築いていったそうです。
2007年つくも窯を立ち上げる。
現在は、電気窯、登り窯、穴窯と作品作りの幅を広げ新しいことに日々挑戦しています。

【北海道初 “十場天伸” 展】
2022.7.13(wed) – 18(mon)
open 11:00-18:00
札幌市中央区北1条西27丁目2-15 ユエニBLD B1/3F
※初日13日は作家在廊予定です
※MING folk equipmentが入っているビルのB1 galleryスペースと3F実店舗の2カ所での開催です。

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