Reconstruct=再構築と題した今回の企画。まず、オイルドコットンの生地を探してみましたが、本場イギリスの生地は価格が高く現実的ではない。 国産の生地は確保できても今度はそれを縫ってくれる縫製工場がない。(オイルドコットンは文字通りオイルが付着している為、ミシンや作業台を汚したり、針穴が残り縫い直しができないという理由から縫製を断られることが多い)など様々な理由があり、完成に至るまでは一筋縄には行きませんでした。こんな時の頼みの綱は、作家Kenta Yamamotoしかいない笑 彼は私たちMINGの思いを理解し「できるまでやる」というポリシーを持って追求してくれると思ったからだ。勿論今回の企画もまずはやってみましょう!と快く引き受けてくれたのである。こうしてなかなか前に進まずにいたMINGのReconstruct は重たい歯車が動き始めた。
当初より頭を悩ませていたオイルド生地問題は、ふらりと入った古着屋で目にしたボロボロのVintage Barbour を見て思い付いた。これを解体して何か新しい物が作れたら..!素材や雰囲気はとても良いのに一部破れていたりというだけで買い手が付かずにいるBarbourを再構築することで、新たな道具としてさらに長く使える物になれば良いんじゃないか、と。早速数々のBarbourをディーラーから仕入れ彼の元へ持って行った。
やぶれが酷かったり、オイルもすっかりと抜けきってしまっているVintage Barbourたち。
一度完成されている洋服を解体するという作業は意外と楽ではなく、改めてBarbourの丈夫さや作りの良さを知る事にも繋がった。元々がアウトドアウェアーであるBarbourはそれなりに汚れている物が多く1つ1つクリーニング。実際に作業をしてくれている彼は、こんな機会は中々ないということでパターンを分析してみたり生地の違いを比べてみたりと隈なく作りを研究したようだ。その探究心には本当に頭が下がるばかり。(ちなみに作業中に着用している洋服は全て自身で作ったもの!)
解体した生地からのパターン取り。小穴やダメージを避けて少しでも生地を無駄にしないように。
各パーツを切り終えたところ。見ての通りパターンもコンピューターで出力したものでもなく、裁断機も使わず、全て手作業。昔ながらの手法で作られる物には現代の簡素化された物とは違う雰囲気を纏っているはず。
前回のFirst Aid Bagと同様、使用するミシンは1920年代製のSINGERだ。ちなみにこのミシンもジャンク品として売られていた物を、正常に稼働するように彼自身の手で直したもの。彼はもちろんミシン屋でもない笑 ここにも「できるまでやる」という彼のポリシーをビシビシ感じる。勿論コンセントなどは付いている訳もなく足踏み式のアンプラグドスタイルだ。
ここまでかたちになるまでには何度もサンプルを作り直し、細かな仕様に至るまで彼と試行錯誤を繰り返した。ベースにしたのはもともと私たちが好きで愛用していたvintageのハットとキャップ。長く愛用する中で、もっとこうだったら良いのにという理想があったので、少しづつその姿に近づける作業。
正直初めは少し簡単に考えていた部分もあったが、色々試せたからこそわかったこともあった。vintageを解体し再構築するということで、改めて英国で長く愛用され今の時代まで残ってきた物ならではの仕立ての良さや、生地の素晴らしさも実感することができた。
ひとつずつ手作業で、ひと針ひと針丁寧に仕立てられたこの帽子は、この現代では中々目にすることがないようなひとけを感じられる気がする。決して大量生産では感じられない空気感。いろんな要素が加わって、私たち自身も長く愛用したいと思えるハットとキャップが完成した。使い始めよりも、長く使ってリプルーフを繰り返していくことで、更に良いものへと変化していくはずだ。
前フリが長くなってしまいましたが、次回のコラムでは商品について詳しくご説明します。楽しみにしていただけると嬉しいです。
Reconstruct by MING
OILED HAT
OILED DUCKBILL CAP