前回のコラムではうつわの魅力についてお話しさせて頂きましたが、本日は続編でMINGでは欠かせないスリップウェアを制作しているつくも窯を訪問したときの様子を書いてみます。 3月某日、神戸の三宮から北に向かって約1時間ほどの淡河町という地域を目指しレンタカーでいざ出発。北海道のゆったりとした公道しか運転したことのない僕にとって関西での運転はハードルが高かった。高速を抜けるまで気が抜けず手に汗握る運転が続いた。ようやく高速の出口を抜けるとそこは里山という言葉がぴったりののどかな景色が広がっていた。少し落ち着き周りを見渡したところ、目に入ってくるのは満開を迎えた桜と水田そして寺院のみ。おそらく農家と思われる民家がぽつぽつとあるだけで、本当にここら辺で良いのだろうか?と少しばかり不安になりながらも竹林を抜けると趣のある茅葺き屋根と窯が姿を表した。これだ!間違いない!! なぜ自信があったかというと以前からつくも窯の一ファンだった僕はありとあらゆる雑誌やインターネットなどでつくも窯を追っかけていたということもあり勝手ながらその姿は知っていた。だが実物はもっと素晴らしかった…
ほんわり暖かい日差し、乾いた草の匂い、縁側に並ぶ子供達の靴や自転車、流れる雲のなか威風堂々と佇む茅葺き屋根。雑誌やインターネットでは感じ取れない五感に伝わってくる刺激、動き、生活感、が垣間見えそんなところに心が惹かれた。そして家の中から十場さんがお出迎え。作家の張本人である十場さんとも緊張の初対面。だが不思議と十場さんのおおらかな人柄に緊張はすぐに解け、気づくと夢中で色々なことを聞いてしまっていた。笑 二階のギャラリーを見せて頂き、居間に案内してもらった。外観からは想像できないモダンな石造のキッチンでお茶を立ててくれたその姿がなんとも粋で格好良い。最近は茶室を作るほどお茶に拘っているそうだ。茅葺き屋根にお茶の組み合わせは歴史の浅い北海道にはない文化だと感じた。なんだろう?本当の日本らしさのようなものを肌で感じたような気がした。北海道とはまた一味違った豊かさでとても感激した。僕にとっては憧れの場所で何もかもが素敵な体験だった。この日のことは鮮明に覚えているし、大袈裟ではなく何年も前からこの日を夢見ていた。間違いなくこれからの人生の中でも思い出に残る1日になったのだ。
ということで、後編に続きます。次回のコラムは工房編です!
ぜひ最後までお付き合いいただけると嬉しいです。それではまた明日。
岩谷