今週末に開催されるイベント「MOROCCAN RUG TOURS」に向けて全 2回に渡りコラムをお届けいたします。前回のコラムでは、なぜ異国の地モロッコで作られるラグが北海道の生活に良いのか?という視点でしたが、今回はより側面的な部分にフォーカスを当てていきます。それが今回のタイトルでもある“デザイナーたちが愛用したモロッカンラグ” です。私自身恥ずかしながら過去の”偉人たちの愛用品”というトピックにめっぽう弱くそのワードを聞くだけで物欲が湧いてきます笑
中でもこの御三方のモロッカンラグの使い方はとても勉強になるのです。
アルヴァ・アールト(Alvar Aalto) 1898-1976
フィンランドが生んだ20世紀を代表する世界的な建築家、都市計画家、デザイナー。その活動は建築から家具、ガラス食器などの日用品のデザイン、絵画までと多岐にわたる。
アアルト建築の最高傑作と言われるマイレア邸。ミッドセンチュリー期より一足早く北欧モダンなスタイルを作り出した。暖炉の前に悠々と敷かれたモロッカンラグは、モダンな印象ながら温もりも感じさせるお手本にしたいスタイルです。
自邸やアトリエ共にメインとなるスペースでは必ずと言っていいほどこのモロッカンラグが使われています。シンプルなテキスタイルのラグはアアルトがデザインした家具とも調和しモダンな空間を演出しています。余談ですが、フィンランドでは日本と同様に家の中では靴を脱いで生活するそうで、足裏から伝わるモロッカンラグの心地良さにフィンランドの人たちも魅了されたのかもしれませんね。
フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright) 1867-1959
アメリカの建築家。アメリカ大陸で多くの建築作品があり、日本にもいくつか作品を残している。ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと共に「近代建築の三大巨匠」と呼ばれる(ヴァルター・グロピウスを加え四大巨匠とみなすこともある)。「カーポート」の名付け親でもあり、1930年代にユーソニアン住宅にカーポートを設置し、初めてカーポートと呼んだ。代表作に落水荘や日本の帝国ホテルがある。
落水荘が建設されたアメリカ・ペンシルバニア州の夏場は30℃を超える日も少なくないが、冬は−5℃前後と冷え込むことも多いそうです。ゲストハウスの暖炉の前やゲストルームのベッド脇にはこのモロッカンラグが敷かれており、来客の身体をいたわる”おもてなし”の心が伺えます。私も自宅で使っていて思うのですが、ウールのラグは湿気を感じさせない、または湿気を蒸散させる効果が備わっているので、夏場に敷きっぱなしでも暑さを感じさせず、防臭効果もありとても快適に過ごせます。アメリカにもウール素材を用いたラグはチマヨなどが存在しますが、より寒い地域ではこのように毛足の長いラグが好まれていたのかもしれません。アメリカらしいダイナミックなインテリアにも違和感なく馴染んでいるのが素敵です。
ジョージ・カツトシ・ナカシマ (George Katsutoshi Nakashima) 1905-1990
アメリカの家具デザイナー。建築家。香川県高松市牟礼町に2008年ジョージナカシマ記念館が開設された。帝国ホテル建設の際にフランク・ロイド・ライトに伴って来日し、東京事務所を開設したアントニン・レーモンド建築事務所に入所。前川國男・吉村順三と共に働く。
日系アメリカ人であるジョージナカシマの家具はなんと言っても自身の生い立ちが色濃く反映した和のテイスト+モダンデザインが特徴。自邸や工房もそのテイストが精通しており、そこには無地のモロッカンラグが ”侘び寂び” のごとく敷かれている。モロッカンラグは菱形模様のテキスタイルがフォーカスされがちですが、無地(ソリッド)も多く、あらゆるテイストに合わせ易いというところもおすすめなポイントです。きっとこれだけさまざまな物を見てインプットし、且つ独自のフィルターを通し新しい物を生み出す孤高のデザイナーたちですから、その審美眼に選ばれた理由は偶然ではなく必然であると私は推測しています!暖かく機能的であること、テキスタイルが優れていること、人の手作業によって丁寧に作られていることこと、そんな部分に自分たちが作る建築や家具と共通点を感じていたのではないでしょうか。
<Place①>
開催日:2月23日(祝金)〜2月27日(火)
時 間:12時〜18時
場 所:NOTHING by RITARU @nothing_ritaru
住 所:札幌市中央区北3条西26丁目3-8 2F
(※RITARU COFFEEさん隣のギャラリー)
(※お店の前に駐車スペース有り、他近隣にパーキング有り)
<Place②>
開催日:3月2日(土)〜3月3日(日)
時 間:11時〜19時(3日は18時まで)
場 所:Pastoral @pastoral_obo
住 所:帯広市西1条南4丁目14番地1
(※駐車スペース有り)
モロッコの様々な地域で作られるラグを一挙にご覧いただけるイベントを開催。会期中はモロッコのラグだけでなく、アフリカンスツールや、細かな刺し子が美しいインドのキルトなども豊富に並ぶイベントです。今回はツアーと題し、札幌のギャラリーNOTHINGさんで開催後、帯広のPastoralさんへと会場を移し、2週に渡り開催します!大小様々なモロッコラグが約40枚、アフリカンスツールやキルトも同様にたくさんの数が並びます。これほどの数が並ぶ機会はなかなか無いので、いつか欲しいな、一度見てみたいな、前から気になっていたという方にはもちろん、ぜひ一度皆様にご覧いただきたいです。
感覚で選ぶもよし、置きたい場所に合うサイズで選んでもよし、予算で選ぶもよし、きっとそれぞれ選ぶ基準があると思いますが、見た目にも手触りもあたたかい心地のするラグが、皆様の生活を少し豊かにすることを願っています!