COLUMN

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2025.04.09

赤い牛舎のもとで

北海道のほぼ中心部、旭川から程近い東神楽という町に目的地の赤い牛舎がある。住宅街を抜けると広大な畑が広がっていてそこにポツンと古めかしい牛舎が佇んでいた。いかにも北海道の田舎らしいのどかな雰囲気の中で木工作品を作るのが今野翼さんだ。

初めて今野さんの存在を知ったのは確か北海道のローカル雑誌だったような気がする。その中で今野さんは僕も大好きなヨーロッパミリタリーのスモックを着て作品作りをしていた。その姿を見ただけでビビッときてしまい会ってみたいという気持ちになりすぐに連絡をとった。北海道は豊富な木材があることから木材の工芸品や家具などはよく目にするのですが、どこか自分との接点を感じられるものに出会えずで、勝手に今野さんへの期待を膨らませていた。

「こんにちは〜!」と笑顔で僕たちを迎え入れエールを撫でてくれた今野さん。思い描いていた通りの穏やかな人柄にすっかり僕たちの緊張もほぐれてしまった。この古い牛舎は今野さんが借りる以前も家具職人の方が工房として利用していたらしく、そのバトンを受け継いでいるようなそんな偶然も何か縁を感じていると今野さんは言う。

実際に作っている作品をいくつか見せて頂いた。今野さんの作品はとても素朴で実用性に長けていて生活の道具といった印象だ。華美な装飾や意匠は無くまさにこの牛舎から生まれる牧歌的な魅力を感じた。木材1つ1つの特徴を観察し、時には欠けていたり変色していたりする部分も個性として活かしているそう。人間都合ではなく木材が生き物として残してきた痕跡を最大の魅力として変換する伝道師のような役目だ。

今野さんとは古材の話、北海道の昔の話、そして古着の話と気づくと古い物の話ばかりしてしまう。お互い日本からヨーロッパのものまで国籍問わず古いものが好きと言う事がわかった。そこからさらに話は広がり、かつてヨーロッパの家具には北海道産のナラ材が使われていたという事実を背景に、優れたアンティークを丁寧な手仕事で復刻しようという話になった。

牛舎から見える大雪山
雪代の混じる美瑛川

そんな僕たちの好きから派生した作品たちが構想を経て徐々に形になりMINGの店頭に並び始めている。かつてのヨーロッパの職人達が認めた北海道の木材の価値を再確認し、改めて北海道という大地の素晴らしさを沢山の方に知ってもらうきっかけになればと思う。道民にこそ見直してほしい、隣の芝を羨む前に足元の芝がこんなにも青々としているという事を。北海道の未来は明るい!!と嬉しくなった帰り道だったのでした。

今野さんの作品はこちらからご覧いただけます。
https://minghokkaido.thebase.in/categories/6015325

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