COLUMN

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2025.07.11

仏ノルマンディに渡った”Us Army Trousers”

Us Army Trousersは、文字通り米軍のミリタリーパンツをモチーフに制作したアイテムです。今回のコラムでは今一度なぜこのパンツにフォーカスを当てたのか?その他、ディテールについても掘り下げてみようと思います。

なぜ米軍のパンツ?
現代においてみなさんが周知しているチノパンやオリーブカラーのミリタリーパンツは、第二次世界大戦時の米軍のユニフォームがその根本となっているのはご存知でしょうか?ミリタリーユニフォームは、兵士たちの命と国の未来がかかっていた為、膨大な国家予算で作られ、当時の最良の技術を駆使して作られていました。みなさんがよく目にする現代の洋服の中にも元を辿れば、ミリタリーウェアーというアイテムが多く存在するのです。

 

MING / Us Army TrousersはM-43 Trousers をモチーフに

私たちMINGがリリースしているUs Army Trousersは、1943年第二次世界大戦中の米軍に支給されていたチノトラウザースをモチーフに作成しています。実際に私たちが所有しているヴィンテージのM-43 Trousersは、一見ベーシックなチノパンなのですが、フロントフライ(前立て)に特徴がありました。一般的なチノパンではまず見かけることのないガスフラップ仕様(※写真)です。

このディテール、歴史上最も最大の作戦劇といわれる[ノルマンディー上陸作戦 ]が関係しています。ドイツ占領下のフランス・ノルマンディーに、米軍率いる連合国軍が上陸しフランスを解放する、ということを目的とする作戦でした。そのノルマンディー上陸作戦では有毒ガスを使った戦闘プランが想定されていたそうで、その際に負傷を防ぐためにフロントの前立て部分にガスの侵入を防ぐ細工を施したそうです。実際には有毒ガスを使ったプランは実行されなかったそうですが、このディテールからはそんな歴史を垣間見ることができるのです。

(1944年にLee Millerが撮影した、ノルマンディーで看護する米軍のナース)
(元にしたVintage)
(左 : Vintage / 右 : MING US ARMY TROUSERS)

アメリカ生まれでありながら国境を越えフランスに渡ったというミリタリーウェアーが、その後、アメリカ人によってアイビーに? フランス人によってフレンチカジュアルに? はたまたイギリス人によってトラッドに? 各国にどんなふうに広がっていったのか。想像するだけでこのトラウザースの本質が見えてくるような気がします。

(ミリタリーパンツを穿くデイヴィッド ホックニー)
(チノトラウザースのまま川に入るブラッドピッド 映画リバーランズ スルーイットより)
(チノトラウザースにチェックのシャツが良く似合うドナルドジャッド)
(家具に使う木材を選別しているジョージナカシマの足元はチノトラウザースにガムシュー)

Detail
その他のディテールも見ていきましょう。サイドシームはクラシックなワークウェアでは欠かすことのできない巻き縫い(※写真 )で仕上げました。古き時代のワークウェアを縫う際に効率を求め開発された縫い方で、生地を二重に巻き込み、表側に二本のステッチ、裏側に環状(チェーン)のステッチで縫い合わせる方法です。縫い代が生地の中に隠れるため、肌触りが良くほつれにくいのが特徴。環縫いミシンという専用のミシンで縫うのですが、このミシンは北海道には存在しない為、道外の縫製工場で作成しています。この縫い方をすることで洗濯後に生地の縮みによるポコポコとした凹凸が出て表情が良くなるのです。

(因みに元にしたVintageは脇割りのロック仕上げ。私たち自身がこの仕様ではなく巻き縫い仕上げによる経年変化に目がないので今回はこの仕様を採用。細かな部分ですが譲れないこだわりポイントでもあります)

その他、間隔の狭いウエスト周りのベルトループなどもこの年代ならではの趣を感じさせるディテールの1つです。

【West Point Chino】
チノ素材には、米陸軍の士官たちを育成する [ニューヨーク州・ウエストポイント士官学校] の制服に採用されていたウエポンチノを使用。通常のチノ素材が単糸なのに比べ、こちらは双糸の綾織で織られており、上品な光沢感としなやかな肌触りが特徴の最高級チノ素材です。

【Herringbone Twill】
素材には、1940年代にUS ARMY. NAVYで使用されていたヘリンボーンツイル(杉綾織)を使用。ノルマンディー上陸作戦時に支給されていた当時の生地を忠実に再現した素材です。ベースとなるモデル自体も同年代のパンツである為、相性は申し分ありません。

 

Fit(シルエット)
元にしたヴィンテージをお手本にシルエットはゆったりストレート。しっかりと太さがありながらお尻周りは過度にダボつかず綺麗に収まるシルエットが特徴です。たまたま私達が所有していたヴィンテージは、当時のオーナーによって一手間が加えられていて、偶然にもヒップ周りが綺麗なシルエットにリサイズされていたのでした。まさに偶然の産物から生まれたシルエットであり唯一無二の良さを感じています。

2つの素材はどちらも同じ時代に採用されていたものですが、使われていた用途は少し違っていました。チノトラウザースは主に位の高い指揮官が履いており、やや正装としての要素も含んでいました。またヘリンボーントラウザースは、オリーブドラブのカラーからも分かるように野戦用でした。その点を踏まえると現代の私たちのコーディネートへのヒントに繋がるように思えます。

 

【チノトラウザース=よそ行きとしての日常着】
・クールビズとしての仕事着
・外食に出かける際にシャツを着たりカジュアルなジャケットを羽織ったり
・親戚が集まるような行事の時

 

【ヘリンボーントラウザース= 汚しても良い日常着】
・庭仕事
・アウトドアやレジャー
・愛犬との散歩

 

といった棲み分けができてきます。
例として私たちの日常を振り返るとこのようなシチュエーションで穿いていますが、もちろんコーディネートは自由ですので枠に捉われず様々なTPOでの着用を楽しんで頂きたいと思います!どちらも同じ日常着ですが、双方の得意分野を見つけ着こなしに活かす。そんなことを考えながら洋服を楽しむのも良いものです。

第二次世界大戦の戦線とともに世界に渡り、その後戦争の遺産として民間人に愛用され、さまざまなファッションへと用いられたチノトラウザースやヘリンボーントラウザース。これまでも、きっとこれからもカジュアルファッションの中核として存在し続けるミリタリートラウザースを貴方のワードローブにも加えてみませんか?

MING / Us Army Trousers
West Point Chino Khaki
Size / 0.1.2.3
Price / ¥30000+tax
MING / Us Army Trousers
Herringbone Twill Olive Drabi
Size / 0.1.2.3
Price / ¥30000+tax
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