COLUMN

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2026.04.19

“Beauty rests on utility.”(美は有用性に宿る)

タイトルにもあるように”Beauty rests on utility.”(美は有用性に宿る)とはシェーカー教を象徴する言葉です。MINGでは以前からシェーカーの工芸品の代名詞とも言えるようなオーバルボックスを展開しています。それは北海道十勝の豊頃町でシェーカー家具を制作しているBrick by Brickさんが1つ1つ製作しているのもの。シェーカー家具を京都で学んだBrick by Brickの白木さんは本場アメリカのシェーカービレッジへと足を運び、その後地元である北海道に戻り北海道ならではの木材を使いシェーカースタイルの家具を製作しています。そんなBrick by Brickさんと今週末から初めてシェーカー家具の展示・受注イベントを行います。

そもそもシェーカー家具とは?シェーカー教とは何なのか?今までわたし自身、単純に ”シェーカー家具って素敵だな” ”シェーカーボックスって良いな” と思いながらも実際にシェーカーについて深く調べたことがなく正直あまり知らずにいました。しかし今回Brick by Brickさんの家具の展示を行うにあたり私なりに色々調べていると、いろんな意味でシンプルな暮らし方で機能性に優れた<ミニマルなものづくり>にとても共感を持ちました。シェーカー”教”というだけあってやはり思想的・哲学的な部分も多いのですが、モノづくりに対する思いや、生活で使うもの(道具)に対する考え方はとても共感し、ぜひいろんな方にも知って欲しいと思いこうして自分なりにまとめることにしました。

Shakers=(シェーカー教)はイギリスで設立されその後アメリカで組織されたキリスト教派のひとつで、集会時に歌って踊って体を揺らしながら祈る姿から震える人たちを意味するシェーカーズ(Shakers)と呼ばれるようになります。1774年に教祖のアン・リーら9人がイギリスのリバプールからアメリカニューヨークに上陸。布教活動を行いながら各地にコミュニティを設立し1800年代半ばには約6000人もの信徒数になります。しかしながら独身主義であるため子供が生まれないことや、精神的支柱となるような強力なリーダーが現れなかったこと、信徒の高齢化などによりコミュニティは次第に縮小していき、2024年7月時点ではメイン州に2人の教徒が暮らすのみとなりました。(現在は3名に増えているそう)

 

シェーカーの人々は食料から衣類、建築とできる限りの範囲で自給自足を目指しました。その中でも彼らが製作し、生活で使用していた家具はシェーカー家具( Shaker Furniture)と呼ばれています。シェーカーのものづくりのベースとなる理念最大の特徴はシンプルで機能的であるということです。簡素であることはシェーカーの捉える美徳であり、ものづくりだけでなく生活や思想、言動、振る舞いなどあらゆる場面で意識されています。また、地元で手に入れやすい木材を用いたことも特徴です。

シェーカーの人々は労働と祈りの日々を送ったといわれます。起床から就寝まで多くの時間を労働に費やし、 “生活”と”労働”が非常に密接な生活をしていました。そのためどう快適に効率化するのかというアイデアに富んだものづくりがシェーカー家具の特徴だといえます。(例えば整理整頓や掃除がしやすいようなアイデアや効率的で合理的なものづくり)特に「軽さ」と「収納性」への追求は何より特徴的です。家具類は持ち運びや移動のことを考え非常に軽く、特に椅子はペグボードにかけられるほど軽く作られています。

シェーカーの部屋の壁にはこのようなペグボードが付けられ、こうして椅子をかけたり洋服などをかけて使用している

 

小物の収納には様々なサイズに合わせて用意されたオーバルボックスを使用し、整理整頓に対する意識は極めて高いものでした。オーバルボックスは“Beauty rests on utility.”(美は有用性に宿る)の教えを体現しているものとも言えます。さまざまなサイズが正確に作られており、スタッキングできるのが特徴のオーバルボックス。使わない時は大きな箱の中に小さな箱を収納できるよう設計されています。これは限られた空間を効率的に使うための知恵です。もともとは種子やハーブ、裁縫道具などを保管するためのごく日常的な保存容器として使われていました。この徹底した合理性と洗練されたデザインで現在は世界中で愛される工芸品となっています。

日本では針葉樹を使った曲げわっぱが身近な物ですが、シェーカースタイルのオーバルボックスは広葉樹を使います。Brick by Brickさんのオーバルボックスは十勝地域のヤマザクラやナラ、カバなど様々な樹種が使用されています。

ミニマルで機能性の高いデザインは、数々の家具デザイナー達に影響を与え、ウィンザーチェア、トーネットの椅子、中国の明代の椅子などと共に、近代木製椅子のルーツの一つとされています。

シェーカーのものづくりや考え方は、私たちMINGのものづくりと共通するところが沢山あります。用の美というワードはMINGも大切にしている信念で、装飾のためのものではなく機能的で、直しながら長く大切に愛着を持って使えるようなものづくりをし続けたいと思っています。MINGのワークウエアが道具としての服であるように、シェーカー家具も道具としての家具なのだろうと私自身は解釈しています。

そんな機能性に優れたシェーカー家具を北海道十勝地域の身近な木材を使い、1人の手で丁寧に製作しているBrick by Brickさんのシェーカー家具。『シェーカーの家具は 「こうしなければならない」ということよりも、「こうした方が良い」の積み重ねによって様式を作り出してきました』と白木さん。なるほど、とシェーカー家具について調べるほどにその言葉が妙にしっくり来ました。

豊頃のBrick by Brickにて。実際に白木さんの製作した椅子に座りながらシェーカー家具について談義の様子。

 

実際に椅子を製作している様子を見せていただく。座面のテープは数種類の中から色を選ぶことができる。国産イグサロープも選択可。

 

ロッキングチェアーに座りながら読書。ロッキングチェアーも様々なタイプを製作している。ささやかに揺れるもの、読書用、ゆったりとしたもの、脱力しすぎないもの、アームのないもの、などなどライフスタイルに合わせて選ぶもの楽しい。

 

併設しているカフェでランチをいただく。サイドテーブルももちろんBrick by Brickのもの。

 

オーバルボックス、ハンドル付きのキャリアー。材は北海道産のシラカバとオークが中心。

 

家具のショールームを兼ねたコーヒーショップではBrick by Brickの未歩さんお手製の焼菓子や軽食や、自家焙煎珈琲も楽しめる。煉瓦造りのこの建物はとても広いのだがお二人自身でリノベーション。もちろん家具も全てご自身の作品。脱帽!とにかく建物が大きいのでまだまだ今後も楽しみな計画があるのだとか。楽しみでならない!

 

洋服も、器も、家具も、どんなものでも「こういう人がこういう思いでものづくりをしている」ということを実際に知った上で、自分の生活に取り入れることで得られる “豊かさ” や “満足感” があると思います。私たちも実際にBrick by Brickのお二人に出会い、シェーカースタイルの家具を間近で目にし、ものづくりに対する熱い思いを聞き、Brick by Brickさんに魅了されています。このイベントでまずは皆さまにBrick by Brickさんという人たちを知ってほしい、そしてシェーカー家具について興味を持ってもらうきっかけになれば嬉しいです。

 

text 岩谷麻美

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